お母さんは少し考えてから、
「お父さんの初恋の相手が私だった? あっ……そう言われれば、大好きな漫画に出ていた名前を見て、"可愛いから自分の子供にもこの名前を付けたい"って男の子に話したかな、あれはお父さんだったっけ、、」



本当に知らなかったみたい、、
付き合ってても、結婚しても、私が生まれても………、


二人が小学校で出会った時に両思いだったって、



「お父さんもお母さんも知らなかったの? 小学生の頃の互いの気持ち」
「再会してからは、一度もそんな話をしたことはなかったわ」

「変なの、普通は話さないかな、同級生なんだから、昔から好きだったとかさー」

「お父さんシャイで照れ屋だったからね」
お母さんもそういうところがある、男からしたら守ってあげたいタイプだ。


「どういう再会だったの?」

「う、うん、恥ずかしいから、結衣にもあまり話したくない」

「なにー、余計に聞きたくなるじゃない」


テーブルの上で指を無造作に絡めながら、本当に恥ずかしそうにお母さんは二人の出会いを語り始めた。

「お父さん、地元に帰ってから栄のセントラルパークでギター一本で歌ってた」
「路上ライブってやつね、へー知らなかった」

夢を諦めて地元に帰っても、優衣さんを幸せにできなかったからだ、
お父さんは進むべき道を無くしてしまった。