堤防の脇には西洋タンポポの黄色い花が終わりを告げ、まん丸の白い綿毛が強めの春風に吹かれて耐えていた、

耐えて耐えて、力を蓄えて、

もう直ぐ旅立ちの時だ、想像して自然と口元が緩む、

かといって、
私も風に乗って何処までも飛んでいけたらいいのに、なんて乙女チックな気分にもなれない。

私が何もかも捨てて旅立てる日は来るのだろうか、
退屈な高校生活は始まったばかりだ。


「高橋さーん! 待ってよー」

名前を呼ばれて振り返ると、進藤くんが遠くから自転車で勢いよく近づいてくるのが見えた。

私の横で急ブレーキをかけたかと思いきや、自転車を飛び降りて手で押しながら並んで歩き出した、

「一緒に帰っていい?」 
満面の笑顔で真っ直ぐに見つめられた、

周りを見渡し他に誰もいない事を確認して、
それでも信じられない彼の言葉に、無意識に疑問符がついていた、

「わたしと?」

「うん、帰る方向が同じだからいいでしょ」

聞けば彼の家と私の家とは一キロと離れていなかった、

「へぇーそんなに近かったんだー、どっかで出会っていたかもしれないね」
ちょうど学区の境目で小中学校は違っていたから、彼とは高校に入って初めて顔を合わせた。

「入学してすぐに、少し前を歩く高橋さんを見たんだ、家が近いんだーって思ったからさ」

そうなの、いつも下を向いて歩く私はまったく気づかなかった。