無意識に触れた左手に翔琉から貰った指輪はなかった、
病院では嵌めていられないし、万が一無くしても嫌だ、
もう明日は見えない、指輪も翔琉に返そう、、
その仕草を翔琉も見逃さなかった、
「指輪どうしたの?」
「ごめん、入院するから外してきた、、」
「そうか、、でもしょうがないよな」
二人の未来を誓い合った証なのに、それが今の二人の間にはない、
翔琉は悲しそうに呟いて、もう一度婚姻届を私に見せて書くようにせがんだ、
「俺の最後のお願いだから、頼む結衣、宝物にしたいんだ」
「そんなの持ってたらいつまでも引きずるでしょ、新しい恋も出来なくなるよ」
前にも同じような話をした、私が近くにいれば翔琉は幸せを掴むチャンスを逃してしまう、自分でも悲しくなるくらいマイナス思考だった、
役所には出さないという翔琉、ただ宝物として持っていたいと訴えた。
正直もうどうでも良かった、翔琉がそれで満足ならば名前を書くぐらい私にもしてやれる。
そう思ってペンを握ったはいいけど、指先が震えて上手く書けそうもないと知る、あまりの情けなさに涙が流れた、、
その様子を見ていた翔琉は、後ろから抱きしめるようにペンを持つ私の手を優しく握って耳元で囁いた、
「大丈夫、俺がついてる、まずは違う紙で練習しようか」
「ご、ごめんね、、翔琉、、」



