「どうして、そんな事を言うんだ!」
「このまま一緒にいても、互いに辛くなるだけだよ、これ以上私を惨めにさせないで」
言葉を探しているのか、翔琉はしばらく黙り込む。
私の決断を翻すたった一言を見つけるために、、
でも翔琉、そんな魔法のような言葉はどこにもないよ、、
「俺は諦めない、他の男に取られたんならしょうがないけど、病気に負けるわけにはいかない」
「違うよ、相手が病気なんだから勝てる訳がないでしょ」
「……お、俺は負けない、絶対結衣を救けてみせる」
翔琉の言葉を他人事のように聞いていた、
どんなに思いが強くとも、それだけでは覆せない現実がある。
私の人生は幸せだったのだろうか、他の子と比べたらキリがない。
お父さんを早くに亡くしてお母さんと二人で頑張ってきたけど、お金もなくてつまらない学生生活だった、それでも翔琉のおかげで投げやりになることはなかった。
翔琉には感謝しきれない、でも、もういいよ、もう私のことは忘れてくれていい、、
別れの言葉を口にしても翔琉は納得してくれなかった、結局結論保留のままその日は別れた。
仕事は有難いことに休職扱いにしてくれた、元気になれれば復職できる。
ベッドに寝ながらもデザインは考える事ができる、どうせ時間は有り余るほどにある、スケッチブックを片手に思い浮かんだキャラクターやロゴを書き留めるようにしよう。
翔琉は毎日病院に顔を出してくれた、日に日に口数が減っていく私に、ある日一枚の紙を手渡し名前を書くようにせがんだ。
「婚姻届? はははっ、なに馬鹿なこと言ってるの、私はもうすぐ死ぬかも知れないんだよ、今更書けるわけないでしょ」
本当は涙が出るほど嬉しかった、病気じゃなかったら、私に未来があるのなら、、
私だって書きたい、翔琉の奥さんになりたい、



