その気持ちはわかる気がする、愛する人を置き去りにしてまで追いかけた夢だからこそ、それが叶わなかったからと言って優衣さんの元に戻る事は自分を許せないのだろう。
悪戯に過ぎ去った時の価値を、二人は痛いほどわかっていたはずだ。


「ちょっと待っててくれる」

おばさんは、席を立って部屋を出て行った。

「嘘みたいな話だな、母さんと結衣のお父さんが昔恋人同士だったなんて、しかも名前も優衣と翔琉だ、
名前の一致も偶然なんかじゃない、忘れられない恋人の名前を互いに子供につけるほど二人の想いは深かった。相方への裏切りと知りつつも、そうせずにはいられなかったんだ」

「別れたけど……忘れられなかったんだよ、悔やんで泣いて、それでも忘れられないから子供に同じ名前をつけて、恋人の代わりに一生懸命に愛情を注いだのかも」

私は翔琉の肩に頭をもたげ、手を握りしめていた。



やがてリビングに戻ってきたおばさんの手には、同じペンダントが握られていた。

「私も持っている、この中には彼の写真が入っているの、主人には内緒だった、これは翔琉にあげるね」

「いいの? お母さんの宝物でしょ」


おばさんの顔が綻んだ、

「なんかね、私と彼が幸せになれなかった心残りを、今の翔琉と結衣ちゃんが代わりに果たしてくれているような気がするの、最初は二つで一つのハートになるペンダントにしようと思ったんだけど、割れたままのハートを見てるのも悲しいし再び一つになれる自信もなかった、このデザインなら単なるアクセサリーにしか見えないよね、開け方もわからなければ中身を見られることもない、私はたまに思い出しては見ていたけどね」

翔琉はテーブルの上にあった私のペンダントを手に取り、おばさんの手の平に優しく置いた、