「彼は夢を捨てきれなかったの、売れないミュージシャンなんて食べるのに精一杯で、女の私は足手纏いにしかならない。
着いてはいけない、、彼が夢を語った時からわかっていたはずなのに……
夢を追いかけるそんな彼が私は大好きだった、だから私のために夢を諦めて欲しくない、
『いつかあなたの夢が叶って、それでも私を忘れないでいてくれたなら、迎えにきて欲しい』
そう言って笑顔で送り出した。
『翔琉、これを私だと思って肌身離さず持っていて』
その時に私があげたのが今結衣ちゃんが持っているからくりペンダント、中を開けるには知識がいる。私の写真をこっそり忍ばせて彼に渡した。開け方は誰にもわからない、彼にも教えていなかった。
私の代わりに傍に置いて欲しい、そう願いを込めて」
「私が小学校に上がる時、このペンダントは結衣にってくれました。お守りがわりにいつも持ち歩くようにって言葉を添えて。その時にこう言ったんです、『このペンダントはもともと二つあったんだ、今は離れてしまったけど、いつか再会して幸せになりたいと互いを呼び合う声がお父さんには聞こえていた、そんな強い思いが籠ったペンダントだからきっと結衣を幸せに導いてくれるはずだ。お母さんには絶対内緒だけどな』って」
お母さんに内緒の話、私とお父さんだけの秘密、それがまだ小学校に上がったばかりの私には凄く重たく感じられた。
このペンダントにそんな過去があったなんて、、お母さんに内緒のはずだ。
「彼の夢は叶わなかった、三年後に一度だけ彼からメッセージをもらったの、もう夢は諦めて名古屋に帰るって決めたみたいだけど、私を迎えにきてくれるとは言わなかった」
「どうして、、」
「二人にはわかっていたの、彼の夢が叶えば私を迎えに来てくれて二人はきっと結ばれる、でも、もし叶わなければ……報われないって」



