「女子高生? うちの高校の制服だ、どこかで見たことあるような、誰の写真だろう」

「わたし……」

「えっ、お母さんなの? どうして結衣のお父さんのペンダントにお母さんの写真が入ってるの?」

おばさんは両手で顔を隠し泣き出してしまった、

「かける……」




「はい母さん、水でも飲んで落ち着いて」

どれぐらいの時間が過ぎただろうか、泣き腫らした眼をティッシュで押さえて大きく深呼吸をすると、
おばさんは翔琉が出したコップの水を一口含んで胸につっかえていたやり切れない思いを飲み下した。

「ごめんね、恥ずかしいとこ見せちゃった」

「二人は恋人同士だったの?」

「うん、高校を卒業するまでね、進む道が別々になったから……」

私たちと同じだ、でも少し違うかな、それだけの理由で別れる必要はない気がする。



「私は地元の大学に、彼は東京に夢を追いかけて旅立ったの」

東京に……音楽だ! お母さんから聞いた事がある。



「彼はギターが好きで、ミュージシャンに憧れていた、当時流行っていたフォークソング、長渕剛や中島みゆきの曲をカバーして、よく弾き語りで歌ってくれたわ、

『優衣、ごめん、俺は東京に行く、音楽をやりたいんだ』って、

通学路の途中の堤防の上で、
真っ赤な夕陽を背にして、彼は別れの言葉を口にした」