私の名前は夜桜紗奈。いつも完璧主義でなにかとやることがある時などは素早く、的確にこなすようにしている、つもりだ。今日もいつもの学校生活が始まる。月曜日は体がしんどいことが多い。
家を出ようとお母さんが作ってくれたお弁当を鞄に入れようとしていると、お母さんに声を掛けられた。
「紗奈、ちょっといい?話があるんだけど」
私は疑問に思いながらお母さんに近寄った。
「話って?」
そう聞くと、お母さんは深刻そうな、少し申し訳なさそうな微妙な顔付きでテーブルの前に座った。
「実はね、お父さんが経営している会社が転勤することになったの。」
突然の出来事に私はなんて言っていいのか分からなかった。
「それってつまり、引越し?」
私は予想したことを口にした。大抵の仕事の転勤は会社が変わるから家も引っ越さないといけなくなる。
「そうなの。ここからじゃその会社まで遠いから。」
お母さんはそう言って私を見た。
「紗奈にも着いてきてほしいと思ってるところだけど、どう?もし紗奈が残りたいって言うんならどうするか考えるから。」
お母さんはそう言ってくれたけど、私にはどう決断すればいいのか分からなかった。もちろん着いて行ってお母さんたちを支えるのがいいと思う。でも、急に慣れないところに行くのは気が引けた。
私が悩んでいると、お母さんが先に声を出した。
「返事はすぐじゃなくていいの。まだあと一ヶ月ぐらいはあるし。」
「なら、もう少し考えてみる。」
学校で友達と話し合って決めたいと思った。
「分かった。落ち着いて、紗奈なりの答えを出して。」
そう言ってくれたので、私は笑顔で頷いた。(本心からじゃないけど)
時計を見ると電車の出発時刻を指していた。
「あ、急がないと」
私は慌てて鞄を手に、玄関に走った。
「行ってきます!」
明るくお母さんに挨拶をした。
「行ってらっしゃい」
お母さんも笑顔で言ってくれた。
私は微笑みかけて家を出た。