【プロローグ】
俺は人殺しだった。
だが、自分の事は善悪の区別がつく人間だと思っている。
俺の家族は人殺しの一族の家系だった。悪人を殲滅し、善人にも見向きもしない
心無い連中だ。生まれた人間は、一族から、逃げられなかった。
人殺しにも種類がある。大きく分けると二つ、自殺と他殺だ。
殺すということは、自分の在り方を殺してしまう。
俺は、こんなにも残虐な世界しか知ることできないのだろうか。
自分にとって人殺しは任務に過ぎない。
本来、人殺しは、憎しみや怒りから生まれるもの。武士の時代には領土を手に入れるためだ。
そのために、自己中心的な正義を掲げる。
それが俺は許せなかったはずだった。あの事件までは……。