結論から言って、乃愛の疑いは晴れた。
 取調の後、あの真田という若い刑事が更に調べた結果、毒物が入っていたカクテルは圭介のものではないことが判明した。

 カクテルはすり替えられていたのだ。そして、化粧直しのために席を立っていた乃愛は除外された。

 では、誰が圭介に毒入りカクテルを飲ませたのか。警察が疑っているのは、以下の三名である。


 一人目は、圭介の会社の後輩の(かけい)瑞穂(みずほ)、26歳。
 瑞穂は密かに圭介に好意を寄せていたという会社の同僚からの証言があり、圭介の浮気相手だったのではないかと捜査本部は疑っている。

 二人目は、海野(うんの)武久(たけひさ)、28歳。
 圭介の会社の同期であり、営業成績を争うライバルだったそうだ。ここ何ヶ月かはずっと圭介に営業成績で負けており、密かに陰口を叩いていたらしい。

 三人目は、穴山(あなやま)大悟(だいご)、29歳。
 一次会を開いたレストランで働いており、元々はスタッフと常連客の関係だったが、何度かレストランに通う内に親しくなったという。今のところ動機らしいものはない。

 三人に共通するのは、圭介と同じカクテルを飲んでいたということ。つまり、この三人ならカクテルをすり替えられたということだ。