圭介が倒れた時も乃愛は一番近くにいた。だが、乃愛は殺していない、そう何度も訴えている。


「私には彼を殺す動機がありません!」

「……貴方は、友人に由利さんが浮気しているかもしれないと相談していたそうですね」

「! それは……」


 圭介と乃愛は同棲しているのだが、このところずっと帰りが遅い。休みの日もどこかに出かけているが、何をしてどこへ行っているのか、はぐらかされていた。


「由利さんが別の女性と二人で歩いていた姿も目撃されています」

「そ、そんな……!圭介が浮気なんて……」

「知らなかったのですか?」

「知りません。浮気かもしれないと疑ってはいましたが、証拠もないし彼がそんなことするはずないって……」

「そうですか」

「刑事さん!私じゃありません!私は彼をっ、圭介を心から愛しているんです……っ!」


 乃愛はボロボロと涙をこぼしながら、必死に訴える。その場に泣き崩れた。
 突然最愛の人を失った悲しみに暮れる暇も与えられず、彼を殺害した疑いをかけられて心身ともに憔悴していた。


「圭介、圭介ぇ……っ!!」


 何度も愛する人の名前を呼ぶ。これは悪夢であって欲しいと何度願ったことか。
 だが、これは現実なのだ。もう圭介はこの世のどこにもいない。