「この動画は結婚の写真を撮る際に流そうと思っていたそうです。お二人がフォト婚をされるブライダルの担当者に確認したら、どこかのタイミングでサプライズで動画を流したいと相談されていたそうですよ」
真田にそう言われ、返事もできないくらい乃愛は嗚咽が止まらなかった。
そんな乃愛に真田はハンカチを差し出す。
「三好さん、貴方はまだ若い。まだやり直せます。
どうか由利さんの分まで生きてください。由利さんもそれを望んでいるはずです」
「うっ、うっ、圭介……っ」
「さあ、行きましょうか」
真田に支えられ、乃愛は歩き出す。この後殺人未遂の容疑で起訴されるためだ。
「私、純粋なんかじゃない……もう私の手は血に塗れてしまった……」
「そんなことはない。自分が間に合ったのは、由利さんが貴方を止めてくれと言っていたからじゃないかと思っていますよ」
「うぅ……っ」
「大丈夫、貴方の手は綺麗なままです」
乃愛はこの先、どうやって生きていけばいいのかわからない。圭介のいない世界で一人で歩いていけるのか、想像もつかなかった。
それでも、一つだけわかったことがある。
鈴蘭の花は圭介を奪った凶器ではなく、今でも彼が一番愛した花だということ。
彼の溢れんばかりの愛情が詰まった優しい花だということだ。
あのビデオメッセージがなければ、乃愛にとって憎むべき花になってしまっていた。
そうならずにいられたのは、圭介のおかげだった。
「ありがとう……」
これからも鈴蘭の花は、圭介からの純愛の象徴として乃愛の心に咲き続けることだろう。
fin.



