瑞穂はヒステリック気味に叫んだ。


「私じゃない!私が圭介さんを殺すわけないっ!」

「でも貴方、圭介が亡くなる直前にトイレで私とすれ違ったでしょう?あの時、鈴蘭の花粉が手についたんじゃないの?」

「違います。あれはグラスを割って手を切ったから、傷を洗い流しに行っただけですっ」

「それを示す証拠はあるの?」

「ないけど、証明してくれる人はいます!私がグラスを割った時、あの人が手伝ってくれたので」

「あの人?圭介じゃなくて?」

「圭介さんも大丈夫なのか聞いてくれましたけど、グラスを片付けてくれたのは違う人です」


 瑞穂の言葉を聞いて、乃愛は違和感を覚えた。昨日あの人はそんなこと話していなかった。


「あの時、ちゃんと見てなくて腕に当たって後ろのテーブルに置いてあったグラスを落として割ってしまったんです。
圭介さんがすぐに駆け寄ってきてくれましたが、その人がやると言って手際良く片付けてくれました」

「その時その人、カクテルを持っていなかった?」

「持ってましたけど、テーブルに置かれました」

「それで?」

「私も破片を拾おうとして手を切ってしまって、傷を洗った方がいいと勧められました」

「待って、その人はカクテルをどこに置いたの?」

「え?確か、圭介さんのいたテーブルだったかな……」