...あれ?
昼休みも終わりに近づいてきた頃、そろそろ次の授業の準備でもしようか、なんて考えていた時、ドアの近くに見たことのある人物が立っているのに気がついた。
「佑斗くん?」
「あ、色菜ちゃん」
一瞬人違いだったらどうしよう、と思ったけどやっぱり間違ってはいなかったみたいで、
胸を撫で下ろした。
「どうしたの?」
「姉ちゃんいる?」
「あー...楓ちゃん部活だ...」
大会が近いとかで、この頃の楓ちゃんは何やら忙しそうだった。
さっきも、「昼練行ってくる!」って言って教室出ていったな。
「あ、そっか。ありがと」
私がそう伝えると、用が済んだのか、帰ろうとした佑斗くんに、
「あ、あのさ!」
「ん?」
思わず呼び止めてしまった。
まだ、昼休みが終わるまで時間はあるよね。
そんなことを思いながら、口を開く。
「...私、佑斗くんと友達になりたい」
_え?
自分でも自分の言ったことにびっくりした。
ちょっと思ったことを口に出しすぎたみたい...。
どうしよう、このままじゃ変なやつだと思われちゃう...。
そう思って、慌てて「佑斗くんさ、面白いし!」と付け足すけど、すぐにしまった、と思った。
ろくに話したことないのに、言い訳が見苦しすぎる...。
ますますどうしよう、なんて焦っていた時、
「...ぶはっ」
佑斗くんは吹き出して、
「もう友達じゃん!」
にっと笑って言った。
予想外の言葉に驚きはしたけど、それがいつかの楓ちゃんの笑顔と重なって見えて。
「ありがとう」
そう言って、笑い返した。
