校門をくぐると、まるで高校の合格発表の時みたいに入口には多くの人で賑わっていた。

中には、「一緒だ~」と喜ぶ声も聞こえる。

私も探そうかな。

そう思った時、

「色菜、おはよ」

名前を呼ばれたと同時に、ぽんっと軽く肩を叩かれた。

「楓ちゃんっ!おはよう!」

"楓ちゃん"こと"澤野楓"。しっかりしていて、私のお姉ちゃんみたいな存在。

実は小学生の頃から、ずっと仲良くしている親友でもある。

「私と色菜、クラス同じだよ。」

「えっ、ほんと!?」

「うん。2組」

にっと笑って片手でピースをする楓ちゃんを見て、じわじわと嬉しさが混み上がってくる。

だって、去年は違うクラスだったから。

今年は同じクラスになれたらいいなーとは思っていたけど、本当に叶ってしまったから、嬉しいことこの上ない。

「やった!嬉しい!」

思ったことを素直に口に出すと、楓ちゃんもにこっと微笑んだ。

楓ちゃんが教えてくれたから、もう確認する必要はないな。

「じゃあ...」
「あっ、いた!姉ちゃん!」

「じゃあそろそろ教室行く?」と言おうとしたら、誰かの声によって遮られてしまった。

声がした方向に目をやると、少し背の低い男の子が近づいてきた。

すると、隣にいた楓ちゃんが、「佑斗」と呟いた。

佑斗?...あ、もしかして、

「弟くん?」

もしかしてと思って、尋ねると楓ちゃんは私の質問に頷き、

「弟の佑斗。今年で高1」

「へぇ~...」

楓ちゃんの説明を軽く聞きながら、改めて弟くん_佑斗くんに向き直る。

楓ちゃんから弟くんの話は何度か聞いていたけど、見たことはなかったから初対面だな。

そう思って、佑斗くんに話しかける。

「はじめまして、私2年の萩原色菜です。」

別に何の意味もない、なんとなく、親友の弟だからなんとなく、挨拶しようと思っただけ。

「あ、澤野悠斗です。はじめまして。」

だけど、そのなんとなくの挨拶に彼は笑顔で返してくれて、思わずドキッとした。

...ん?ドキッ?...なんで?

1人で疑問に思っていると、

「で、呼びに来たってことは、何かあったんじゃないの?」

横にいた楓ちゃんが佑斗くんに尋ねると、

「あっ、そうだった!母さんたちが、写真撮るから来いって言ってたよ。」

楓ちゃんの言葉を聞いて、思い出したように言う佑斗くん。

忘れてたんだ...。

そんなことを思いながら、苦笑いしていると、どうやら同じことを思ったのか、楓ちゃんは半ば呆れ気味に小さくため息をついた。

その様子を見た私は、また笑みを浮かべる。

ただ、今度は苦笑いじゃなくて。

「ごめん、色菜。今から写真撮るから、先に行ってて」

楓ちゃんが両手をパンっと目の前で合わせて、申し訳なさそうに言ってきた。

多分、私が待ってるよって言うのを分かって気遣って言ったんだろうな。

「分かった!先に行ってるね~」

そこまでして、待っておく必要もないし、教室も一緒だからどうせあとから話せるし。

2人にバイバイして、教室へと足を進める。

少し歩いてから振り返ると、楽しそうに話す楓ちゃんと佑斗くんの姿が。

そこにはなかよしの姉弟がいて、思わず笑みがこぼれる。

なんでだろう...羨ましいのかもしれないな。

今度は苦笑いじゃなくて、微笑みがこぼれた。