「ん?」

 スマホが震えて画面を見る。

【お願い、帰ってきて。寂しい。】

 そんな文章が綴られていた。
 彼女の悲しそうにしている顔が浮かぶ。

「どうかしたか?」

 疲れ切った顔をした同僚が首を傾げる。きっと俺も、彼と同じような顔をしているだろう。

「なんでもない」

 そう首を横に振り、PCの横に置かれている卓上カレンダーを横目で見た。
 彼女と最後に会ったのは、四月の上旬だろうか。きっと――いや、絶対彼女に寂しい思いをさせてしまっている。こんなに仕事が長引いたのは初めてだった。彼女の泣いている姿が目に浮かぶ。

「っ、はぁー」

「……そろそろ帰ったらどうだ」

 思わずため息をつくと、同僚がそんな言葉を投げかけてくる。

「きっと彼女は、一人で心細く待ってると思う」

「……そうだよな」

 きっと今頃泣いている。

 彼女は我儘を言えない性格だ。あんなメッセージを送ってくるくらいだから、相当寂しいのだろう。

「きりの良いところで切り上げるよ」

 俺は同僚にそう言って、仕事を進めたきっと今晩は、彼女に会える。そう思うだけで、力が湧いてきた。