年が明け、新しい一年が始まった。

パイロットには年末年始も関係ない。
恵真も大和も、ゆっくりと休みを取れずに仕事をこなす毎日だった。

だが1月の機内誌に二人のインタビュー記事が載り、ハネムーンフライトの予約が開始されると、二人の周囲は慌ただしくなった。

「よーう、恵真。見たぞ、機内誌。佐倉さんの目からラブラブ光線出てたな。ひゃー、真冬なのにお熱いこと」
「ちょっと、伊沢くん!からかわないでよ」
「だってほんとなんだもん。話してる恵真の横顔をじーっと見つめてる写真なんて、もう佐倉さんの周りにハートマークが飛び交って見えたぞ」
「もう、声が大きいってば」

こんなふうに会う人会う人に冷やかされ、恵真はその度に縮こまっていた。

「あ、藤崎さん!聞いてー。ハネムーンフライトの予約、あっという間に満席になったのよ」

オフィスで川原に声をかけられ、え!と恵真は驚いた。

「もうですか?だってまだ、発売開始から1週間しか経ってないのに」
「そうなのよー。もう上層部もホクホクよ。強気の価格設定だったのに、こんなにすぐに満席になるなんてね。あ、それから、出版社やテレビ局からもお二人に取材の依頼が来てるの。夫婦でパイロットって珍しい上に、絵になるお二人だもんね。無理もないわー。広報課で吟味して、また落ち着いたらお願いするかも。我が社が注目される大チャンス!しかもイメージアップ間違いなし!私も忙しくて嬉しい悲鳴よ。あ、もう行かなきゃ。それじゃあね!」
「は、はい」

勢いについていけず、恵真はポカーンとしながら、川原を見送った。