「君転校生?名前はなんて言うの?」
「えっと、転入生ですかね。名前は花園さやかって言います」
「花園さんは堅苦しいから、さやかって呼んでもいい?」
急な呼び捨てに少しびっくりした。
友達を作るときは、グイグイいくもの!とネットに書いてあったけれど、これがお手本だろう。
「あ、はいどうぞ。逆になんて呼べばいいですかね」
「僕は椿って呼んで」
「えっとじゃあ椿、よろしくね」
これで合っているのか分からないまま、青空の下をのこのこと並んで歩いていく。
一歩、一歩大切に踏み込むたびに、生きていると実感することができる。
私は、もっと早くこの世界を知りたかった。
その後会話はなく沈黙が続いたが、その沈黙は重苦しいものではなかった。
「何か、沈黙が続いても椿とは居やすいかも」
「え?嬉しいな。僕もさやかといると遠慮しなくていいような気がする」
彼は後付けして、「似た者同士だね」と笑って言った。
それだけは絶対ないだろう。それは彼の表情からも読み取ることができた。
「何か、椿は壁が一枚あるよね」
「え、そうかなぁ。あんまり言われないけど」
嘘だ!私の心がそう言っていた。
「嘘だ!」
「え?」
しまった。私としたら、心の声をそのまま言ってしまった。こんなに失礼なことはない。
「あ、えっと、ごめんなさい」
「ふふっ‥‥あははっ」
彼は怒らないで、何故か声を出して笑っていた。
何で笑ったかを聞いても、何も答えてくれなかったけれど、案外こうゆうのも楽しいなって不覚にも思ってしまう。