「わぁ、あれ見て!これクラゲって言うんだって!」


綺麗だ。私も来世はクラゲになりたい。
そう思ったが、変に思われそうなので椿には言わなかった。


「ねぇ、椿もきれ⋯⋯い⋯。椿?」


「なんで泣いてるの?」


隣を見ると、椿は涙を流して立っていた。
私にはわからない何かを椿は沢山経験してきたのだろうか。
辺りは光が少なくいため、誰も私たちの存在に気づいていないようだった。


ーあぁ、普通ってこんなもんかー


誰も私たちを見てはくれない。
こんなに私は傷だらけの体をしているのに、見向きもしてくれない。見たって気づかないフリ。きっと関わりたくないのだろう。


結局は、どんなに助けを求めたって誰も見てはくれない。これじゃあ前までと同じだ。


じゃあ私が、椿を助けてあげなきゃ。


「ねぇ、椿。辛いことがあった時は誰かに頼るんだよ。頼る人が居なかったら、私を頼って」


どこか聞き覚えのあるセリフ。


これは⋯⋯。


『大丈夫。何かあったら、絶対守るからね』


出ていった父親の言葉だ。
でも結局、お父さんは私を置いて出ていってしまった。
お父さん。寂しいよ。でも、あの時私に言ってくれたことは嘘じゃなかったよね。
大切な言葉をくれて、本当にありがとう。もうこの言葉は椿に渡すよ。


「さやか⋯⋯ありがとう」


椿はそう言ってその場でしゃがみ込んだ。
そんなことをしたって気づくのは私一人だけ。
いや、私一人が気づいてあげられるなら、それでいいんだ。誰か、誰か一人が気づけば。