「ほら、こっちおいで」


「うんっ」


立つことも座ることも出来るほどの空間が遊具の下にあったので、そこを拠点にした。


「声、響くね」


「うわ、凄いねほんとに。私の声が反響してるー」


「ねぇ椿、なんか歌ってみてよ」


「えぇ、僕歌得意じゃないから無理」


私は椿に「ケチ」と言って地面に寝転がった。
首元に砂がザラつき、気持ち悪い。でも、それと同時に心地よかった。


周りからは、音が全く聞こえなくて、まるで二人きりの世界みたいで。


「明日、さやかの行きたい所ってどんな所?」


椿の綺麗な声がほんの少し反響して、面白い。


「明日はね、水族館に行ってみたいんだ」


「へぇ、水族館か、、、。いいね。お金も少しなら持ってきてるし。でも顔が隠れるように、マスクと帽子を買おう」


「うん、そうだね」


そう話している最中に、椿も私の近くに来て寝転がった。何だかドキドキする。


「ねぇ、お風呂とかって入れないのかな。もう少し体がベタベタするんだけど」


「あー、シートで体軽く拭けばいんじゃないのかな。はい、これあげる」


そう言ってこちらに渡したのは、椿のカバンに潜んでいた、汗ふきシートと言う名前のものだった。見たこともない袋に入っている。
少しくしゃくしゃに折れ曲がっている。案外荒っぽいところがあるんだなぁと、一つ椿をしれた気がした。


「ちょっと、あっち向いててよね」


「うん、分かってるよ。僕も体拭くからこっち見ないでね」


「見るわけないじゃん。大丈夫だよ」


お互い、体を拭き終えた後、十時だったため寝ることにした。


「じゃあ、おやすみ。さやか」


「うん。おやすみ、椿」


そんな短い会話をして、私たちは眠りについた。