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私は断りの言葉を言うと、イケメンの影も無いなと思うほど呆然とした顔をした男のポケットに例のスマホをねじ込み、足早にその場を去った。
さて車でここまで来たけれど帰りはどう帰るのだろうか。
まぁ入り口で近くの駅でも聞けば後は検索すれば良い。
帰ってとりあえず昨夜録画してあるアニメが見たいな、などと思いながら庭園からホテル棟に入る手前で手首を掴まれた。
後ろから何度も名前を呼ばれていたが全て無視していたのに、捕まえられても後ろを向く気は無くそのまま振りほどいて前に進もうとしたら、大きな手が私の肩を掴み思い切り回転させられ光生さんと向かい合わせになる。
その顔は怒っているわけでも無くただ困惑しているようで、この人は私が断るという選択肢をシミュレーションしていなかったのかな、とぼんやり考えた。
「何故断る!?」
「嫌だからです」
「何故だ!理由は?!」
「最初はお芝居で、次は勝手に交際相手だと言い始めて、私は迷惑だと、止めて欲しいと何度も言いましたよね?」
「だが、何だかんだ最後まで俺と付き合っているだろう?!」
「好意と善意を読み間違えるのはかなり問題です」
大きな手が私の両肩を掴んだまま、目の前で光生さんが必死に言ってくるのを冷めた目で言い返す。
光生さんからすれば、これでも気を遣っている、好きな場所に連れて行っていると思っているのだろう。
私が途中で帰らないから好意があると思い込むとは。
確かに何だかんだ構ってしまったことが、こういう勘違いを生むなんて思っていなかった。



