12上の御曹司と女子高生は愛を育めない


そしてマンションの入り口につき、


「ここです。後で住所送りますので」


そう言うと男はマンションを見上げた後、私を見た。


「お前、名前は」


名前を聞くときは先に名乗れ、という気持ちを押しとどめ、


「川井 紫央里です」

「しおりってもしかして、紫の上の紫が入ってるのか」

「そう、ですね」


初めてそんな確認のされ方をしたので驚いた。
普通、源氏物語の登場人物で聞くだろうか、それも一文字だけ当てるとか。


「俺の名前は名刺にある。後で必ずメールするように」


そういうと彼がくるっと後ろを向けば道路には黒い車が停まっていて、年配の男性が後部座席のドアを開け男は無言で乗り込んだ。
年配の男性は表情も変えず私に深々とお辞儀をしたので、私も慌ててお辞儀をすればその人は運転席に行き車は発進した。

あれ?住所の確認でここ来る必要あっただろうか。
車があるのならわざわざ歩かずに車に乗って私の後をつければ良かった訳で。
そもそも私がマンションの中に入ることも確認せず、部屋番号も聞かれなかった。

まさか単に心配して送ってくれたとか?
いやまさか。それなら車に乗せれば良かった訳だし。
何だかんだ不審に思っていたのだろうとマンションに入った。