「随分社会の先生に熱心に質問していたね」
委員会を終えた後、帰る準備をしていたら横山君が笑顔で声をかけてきた。
その笑顔は、全てわかっているよ、と言わんばかりで頬が引きつりそうだ。
「例の人対策のため?」
楽しそうに聞いてくる横山君に、私は恨めしそうな視線を向ける。
「ごめんごめん、困っていたようなのに何だかそっち方向で立ち向かおうとするなんて思わなくて」
「別に同レベルにとかおこがましいことは思ってないよ。ただ話題を振られたときにあまりに知識が無いと馬鹿にされるから」
「良いんじゃ無いかな、どんな理由であれ視野が広がるし」
「横山君はそういうのも詳しいよね。興味あるの?」
三ツ沢グループのことも、再開発のことも知っていた。
頭が良いというだけではなく、そういう世界に興味があるのだろうか。
だけれど横山君はんー、と顔を斜めに上げて考え込むような顔をすると、
「興味があるってより必要に迫られてかな」
「そういう方向に大学の進学を決めたから?」
彼は私を見て吹きだした。
どこに笑える部分があったのだろう。
「僕で良ければ質問でも相談でも乗るよ。そんなに答えられる範囲は広くないと思うけど」
「いえいえ、とても心強いです。よろしくお願いします」
私がぺこりと頭を下げると、また横山君は笑った。



