数日、何事も無く過ごしていてすっかりあの人のことなど忘れかけていた。
元々あれは数日だけの出来事、この高校生活の方が私のメイン。
友達と校門を出ようとしたとき、黒いスーツを着た年配の男性が私に近づいてきた。
「お待ちしていました」
この人、前回迎えに来た光生さんの秘書の春日部さんだ!
じり、と後退して逃げようとしたら一緒にいた友人達が声をかけてきた。
「知り合い?」
「あー、なんというか」
「光生様が首を長くしてお待ちです」
「これから塾なので」
「本日塾が無いことは把握済みですし、ご両親にもこの後お連れすることは了承を得ています」
おい!うちの親!!
ふるふると身体が怒りとか周囲からの視線の恥ずかしさとかで震えてくる。
だけれどもう関わりの無いこと。
ここできっぱりと言わなければ。
友人達に先に帰って貰うようにお願いし、学校の人達が見ているので車の後ろに行く。
「芝居終わりましたよね?!こういう事は迷惑です、二度と来ないで下さい」
「光生様からは交際相手である紫央里様をお連れするようにと」
「ですから芝居は終わっています!」
大きな声で言ってしまい、慌てて口を手で覆う。
しかし年配の男性は眉を下げゆっくり話しかけてきた。



