その夜。
『恋人がいるのに他の男と帰るのはどうなのか』
というメールが届いた。もちろん送ってきたのは光生さんだ。
怖い、なんで知っているの。
というか本気で毎日やりとりする気か。
『ストーカー』
とだけ返信するとまたすぐに、
『交際相手に他の男がいることが問題だろう』
との返信に、この人ほんとどこまで本気で言っているのだろう。
12歳離れてるんだぞ、自覚はあるのだろうか。どうせメールで弄る口実だろうが不愉快だ。
『もう芝居は終わってるのでそういうのは止めて下さい。
あと仕事しろ』
『芝居じゃ無い、そちらの親にも電話で挨拶しただろう。
それに今も仕事をしている』
10時過ぎなのに仕事してるんだ、大変だなっていや、違う、その前の文面だ。
『交際を申し込まれたことも私がOKを出したことも無いです。
寝言は寝て言え』
『そうか、そういうのが欲しかったのか。
わかった。明日明後日出張だから、その翌日にイベントをやってやろう』
『不要です』
それだけ打って電源をオフにする。
これから毎日夜は電源をオフにする必要がありそうだ。
いや、そもそも着信拒否、メールも拒否設定すれば良いのか。
自分の心の平静が私にとって優先すべき事項。
再度電源を入れ、
『もう関わりたくないです。二度と連絡してこないで下さい。お元気で』
と送信すると全て着信拒否設定にした。
向こうのオモチャにされてこちらが疲弊するなどおかしな話だ。
ネクタイの弁償で脅されて怯みそうになったけれど、こちらがお芝居してやったほうが遙に恩としてはでかい。
あの洋服等々もその為のコスプレ代なのだから、私がそれを気にする必要は無いはず。
すっきりした気持ちで、ちょうど部屋に眠りにきた妹に気付かれることも無く眠りにつけた。



