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月曜日、女の子の友人達とお昼を食べながらも光生さんの件は話さなかった。
話してもきっとどうにもならない。そもそもそういう相談をするより相談されるタイプだし、広がるのもまずい。

週末の疲れが残りながらもいつも通り授業を終え委員会の集まりに参加した後、一年の時同じクラスだった横山君が声をかけてきた。


「どうしたの?」

「え?」

「疲れてるみたいだけどまた何か起きた?」


優しげな彼の顔が心配そうに私を覗き込む。
紳士で優しく、人望もある彼は男女ともに人気があり先生の信頼も厚い。
そんな彼は私が一年の時色々仕事を抱え込んでいることに気付き上手くフォローしてくれ、その後私一人に仕事が集中しないように配慮してくれた素晴らしい男子だ。
気が付けば気兼ねなく話せる唯一の男友達として付き合っている。
女子の羨む視線が時々痛いけれど。


「ううん、学校のことじゃないの、大丈夫」

「もしかしてお家で問題が?話せる部分があれば話だけでも聞けるから」


既に誰もいなくなった教室で、彼は私の横の椅子に座って心配そうに声をかけてくれる。
そう、片思いの相手は彼だ。

だけれど横山君は誰にでも優しい。
ただの同級生、勘違いしないように気をつけなくてはと思いつつ、彼なら口も堅いし話しても良いだろうかと思えてきた。
というか、男性側の意見が欲しい。
彼氏もいたことの無い私には光生さんの行動がよくわからない。
他の友達には相談なんてしないのに、横山君にならと気持ちが緩んでしまう。


「あのね、凄く変な話なんだ。
勝手だとは思うけどこの話、誰にも話さないって約束してもらえる?」


彼は少し驚いたような顔をした後、にっこり笑ってうん、と答えた。


私は光生さんの名前を出さずに、人助けのつもりが迷惑をかけたことから、交際相手の芝居をすることになった事を話す。
彼は頷きながら真面目な表情で聞いていて、淡々と聞いてくれることが話していてとても楽だった。


「なるほど。凄いことになってるね」


ひとしきり話した後、特に訳のわからないメール攻撃に困っているというと、彼は静かに感想を述べた。


「何でそんな事すると川井さんは思う?」


疑問はそこだ。
私の考えでは単に女子高生が珍しいから暇つぶし、というのが一番の理由に思えるのだが。