「ちょっと落ち着いて!それは冗談なんだって」
ポケットに入れていたスマホが震え、すぐさま取り出すとこの元凶の名前。
親がそわそわ見ているのを嫌な気分になりながら通話ボタンをタップする。
『とりあえずご両親に挨拶しておいた。ちゃんと連絡寄こせよ』
「ふざけるな!!」
『どんどん口が悪くなってくるな、そっちが地か?
まぁ面白ければどっちでも良い。じゃぁな、紫央里』
「待ちなさい!三十路!!」
『今後名前呼ばないとネクタイの件を親に話す』
脅迫じゃ無いか!
スマホを持ったまま震えてしまうが、前を見るとハラハラしている父親に、ワクワクしている母親、そして野次馬の妹弟。
私はがくりと首を倒し、
「脅迫なんて最低ですよ、光生さんは今日の一件忘れたんですか?
それだと晩ご飯何食べたかも既に忘れていそうですね」
『うるさい。俺の親に交際相手を紹介したことくらい覚えている。
あぁ電話が入った。じゃぁな』
ツーツーという音が耳に聞こえ、一方的にキレた電話を持ったまま思わず奥歯を噛みしめた。
あの男、何を考えているんだ!



