エレベーターに乗りながら、この洋服はばれないように部屋のどこかに仕舞わねばとか、遅くなった言い訳を考えなくてはとか思うけれど、疲れが押し寄せて脳内が動かなくなってきている気がする。
多分糖分が足りないのだ、帰ったらお腹いっぱいだけれどチョコを食べよう。
すぐに家のドアを開けられず、少し時間をかけて気持ちを落ち着けてから鍵を挿しドアを開けた。
「ただいまぁ」
小さく声を出した後、靴を脱ぎながらすぐさま部屋に行こうとしたら、父親が血相を抱えて玄関に来た。
「紫央里!三ツ沢の御曹司と交際してるって何故黙っていた?!」
「・・・・・・え?」
私は脱ぎかけの靴をポトリと落とす。
父親の後ろには母親が興奮した顔で立っている。
なにが、起きているの?
「今三ツ沢さんから直々に電話があったんだ、『ご挨拶したいと言ったが断られてしまったのでせめて電話だけでも』と。
お前の体調が優れないことも心配されていたから後で電話するんだぞ」
「いつの間に知り合ったの?!あんなイケメンの御曹司と!
ネットで見てみたけどとても28歳には見えないわ!」
「うちの会社は三ツ沢グループの子会社なんだよ。
まさか次期社長と名高い三ツ沢さんのご長男と自分の娘が・・・・・・」
両親が代わる代わる私に責め立てるように話して状況が飲み込めない。
いや、とりあえず一つわかることは誤解されているということで、それをあのボンボンが仕組んだと言うことだ。



