12上の御曹司と女子高生は愛を育めない



「お芝居終わりましたけどまだ夢の中ですか?」

「お前は面白いし気に入ったから交際相手を継続しておくことにした。
第一すぐに付き合いが無くなると親父達に不審がられる」


光栄に思えといわんばかりのドヤ顔。
ここにパイ投げ用のパイがあれば良かったと心から思う日がくるなんて思わなかった。投げつけたい、大量に。


「イケメンの女子に対する「面白いヤツだな」発言は、十八歳以下までしか使用できないってご存じですか?」

「なんだそれは」

「常識ですよ、頭良いって自分で言ったのにそんなこともご存じないとは」


私の適当な発言にプライドが傷ついたのか嫌そうな顔をしている。
だが言っているのは似たような意味のことだと思うし、三十路のおじさんが言うことではない。


「では」

「紫央里!」


ドアを開けた途端呼ばれたので思わずぎょっとした。
ご近所に響かなかっただろうか、今の。


「大きな声出さないで下さい!近所迷惑です!」

「今からご両親に挨拶したいんだが」


真面目な顔で見つめてくるイケメン。
きっとドラマでは盛り上がるシーンなのだろう。だが現実は違う。
何気に一杯一杯だった私の心の中の何かがブツッとキレた。


「・・・・・・帰れ!!」


近所迷惑というのも忘れ思い切り車のドアを閉めると、後ろから私の名前を呼ぶのを無視してマンションに入った。