「その対価はもちろん払う。
お前と話すのは思った以上に気分転換になるとわかった」
「意味不明です。お断りします」
「さっきは話し相手になると言っただろうが」
「友達もいない光生さんを心配して、困ったときなら話し相手になってあげても良いかもしれないなんて薄ら思っただけです」
「無駄な早口を言いながら俺を馬鹿にするな。
とりあえずそういう事だ。今夜からだぞ。
ほら、今すぐスマホ出して俺にLINEのID送れ」
静かに車が停まり、そこは自分のマンションの前。
面倒くさい、と無視して降りようかと思ったときに鞄の中のスマホが震える。
そこには光生さんからのプライベートメアドからメールが届いていた。
それも内容は、テスト、のみ。さすがに頬がヒクつく。
「届いただろ、早くしろ」
「嫌です。なんで私が毎日三十路おじさんの相手しないといけないんですか。
不倫相手にでもしてもらって下さいよ」
「そういう相手はいないって言ってるだろう!それに俺は28だ!」
「あーはいはい、とりあえずお疲れさまでした。もう二度と会うことも無いでしょうが」
私はシートベルトを外してタダで受け取ってしまったワンピースなどが入った大きな紙袋と自分の鞄を持ってドアを開けようとした。
「随分と彼氏に冷たすぎる態度だな?」
後ろからの声に勢いよく振り返れば、面白そうに光生さんが私に視線を寄こす。



