12上の御曹司と女子高生は愛を育めない


私が話し終えるとすぐさま違うとか文句を言うのかと思えば、顎に長い指を当てて考え出した。
何だろう、私の意見を馬鹿にする答えのバージョンでも考えているのだろうか。


「良くわかってるな」


はっきりとした声。まさかの言葉だ。
その声は低い声だったのにじんわり温かみを感じた。だけどすぐに茶化すような声に変わる。


「お前、本当に高校生か?
さすがお母さんとか呼ばれるだけはあるな」

「とりあえず褒めてないことはわかりました」

「いや、褒めてる」


本気で褒めているのだろうか。
軽い笑い声を含んだ言葉をまともに受けると馬鹿にされそうなので、ムッとしたまま食事を進める。


「確かにお前と話すとすぐに捻くれた言葉が返ってきて面白い」

「それは受け取る側の心が歪んでいるせいですね」

「ほらな」

「三十路なんですからもう少し大人の余裕出して下さいよ、高校生と同じレベルになってどうするんですか」

「28だって言ってるだろうが!」


怒った声に耐えきれず吹きだした。
何故かこの人の表情や発言が可愛く思える。
やはりこうやって馬鹿な話が出来る相手はやはり少ないのでは無いだろうか。
立場もあって大人だからそもそも許されないのかも知れない。
それが特に何の関係も無い高校生相手なら気を遣う必要も無いわけで、少しは気分転換になってもらえれば良いな、なんて面倒ごとに巻き込まれたくせに思ってしまう。