「いや、そんなに笑っている自覚は無かった」
「お家では無表情か苛ついた顔が多かったですけど、目が取れそうなくらい驚いた顔をしたり、何だかんだ笑ってるじゃ無いですか」
ぶつぶつ言いながら、次の小さなお皿に入ったのを口に入れれば山菜にクルミのソースがかかっていたようで美味しくて頬が緩む。
「紫央里は美味そうに食うな」
「だって美味しいんですもん。
どうせ上品な食べ方とかそういうのとはほど遠いでしょうけど諦めて下さい」
「なるほどな」
「何ですか」
「いや、美味いという言葉は、言うヤツと態度によって変わるのだと実感してた」
何のことだろうかといぶかしそうに見ると、光生さんは優しげな笑みを浮かべて食べ出した。
う、なんかその笑顔が可愛い。三十路のくせに。
なるほど、日頃酷いヤツほどちょっとした事で印象は簡単に上方修正されるのか。
俗に言う、不良が子猫拾って優しげな笑み浮かべるってシーンの。
これがいわゆるギャップ萌えか、攻撃力高いな。
「なんだ、お前こそニヤニヤしてるだろうが」
「いや、日頃酷い人間だとちょっとしたことで上方修正されるのはずるいなと思っていたところです」
「何だと?」
イラッとした顔をしたけれど、何故かそこまで腹が立たない。
何となくこの人の元にあるものに気付いたような気がしたせいだろうか。
「お前、俺の家を調べたか?」
何のことだろうかと思っていると、光生さんが呆れたような顔をした。



