「とりあえず紫央里が気に入りそうな所をチェックしておいた。
新婚旅行だぞ、気にして宿の金額下げようとか思うな」
しっかり先に釘を刺されたが、まだまだ光生さんの世界には慣れない。
だが彼の伴侶となった以上、ただでさえ12歳も下、一般市民ということで舐められることもあるのだからしっかりしなければならないとわかっているのだが。
「無理に価値観を合わせる必要は無い」
時々鋭く見抜く光生さんがそう言いつつ未だソファーに転がったままの私の頭を優しく撫でる。
「ブランド品ばかり身につけ、高級レストランしか行かない紫央里は紫央里じゃ無い。
気にせず百均に行けば良いし、ファミレスで幸せそうにハンバーグを食べていれば良いんだ」
「なんか他にフォローの仕方はありませんでしたか、社長」
イケメンという武器を使用しながら笑顔で私に言っているけれど、私は冷めた目で夫を見た。
そんな事をしたって光生さんは別に動じない。
いつものじゃれ合いの一つとお互いにわかっているから。
私は雑誌の一つを手に取ると『露天風呂つき個室トップ20』と題されたもの。
付箋の貼られたページを開けば、豪華な離れに大きな露天風呂のついた旅館が紹介されている。



