「新婚旅行は豪華客船で」
そう言っているところで私の冷たい視線に耐えかねた光生さんが、ではなくて、と咳払いをすると、
「まずは国内の温泉地に宿泊、その後海外へ新婚旅行に行こうと思う」
「泊まる旅館やホテルは三ツ沢グループがらみ?」
光生さんの目が泳ぐ。
この人から仕事は切り離せない。覚悟していてもせめて新婚旅行くらい普通の新婚カップルでいたいのにそれも許されないのだろうか。
三ツ沢グループのホテルなどに行けば、社長ご夫妻のおなりだと大変なのだ。
「いや、全て無関係の所にした。一切三ツ沢グループも絡んでいないし」
キョトンと思わず見てしまい、次に何を企んでいるのかまじまじと光生さんの顔を見つめれば、光生さんが恥ずかしさを誤魔化すように声を上げた。
「そんなにジロジロと見るな!
俺は別にうちのグループで紫央里を自慢して回っても良いんだぞ」
「自慢できる内容なんて現役女子大生ってのと年齢差くらいだけでしょ。もう卒業するからあまり意味も無いけど」
「わかった。紫央里を自慢して回るのはまた後にして、まずは紫央里の気が楽になる場所に行こうと思う」
私が先を促すような顔で見ていると、諦めたように立ち上がって自分の仕事部屋から大量の雑誌を抱えてきた。
それは国内と国外の旅行雑誌。
私が昔から気になると言っていた場所が全て入っていて、どの雑誌も付箋が貼ってある。



