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お値段の高いワンピースが皺になるのも気にせずに、リビングのソファーに顔面から倒れ込んで私は低い声を出しながら唸った。
「カエルががひき殺されたような声だな」
「どんな声よ」
化粧も落とさず動くのもおっくうな私の側に光生さんが来ると、冷えたスパークリングウォーターをペットボトルの蓋を開けると渡してくれて、もそもそ起き上がってそれを飲む。
光生さんは私の横に座り、ネクタイを指で緩めながら同じようにペットボトルから直にゴクゴク飲んでいる。
飲み物をグラスに入れるなんてのはエネルギーのある人が出来る技だ。
光生さんも相当疲れているが、私の消耗具合を見て気遣ってくれている。
「すまないな、披露宴もしたのに今度は会社のパーティーに出させて」
「社長夫人になってしまったんだもん、旦那さんを一人にさせられるわけ無いでしょ」
私は大学四年、それも今は二月。大学生活もあと僅か。
あの後紆余曲折ありつつも22歳となった私の誕生日に、なんと光生さんと私は婚姻届を提出した。
その後怒濤の結婚式、披露宴等々が続いて今日でとりあえず大きなイベントを終えたところだった。
光生さんは私が大学二年の時に社長に就任、光生さんのお父さんは会長へ。
その際に残っていたお祖父さんの派閥は消え去って、お祖父さんは力の持たない完全なご隠居となった。



