「すげぇ、恋愛ってこうも馬鹿になれるのか」
「違う。紫央里だから俺は変われたんだ。
お前は俺より先に出会っていたのに見る目がなかったな」
胸を張り自慢げに言う光生さんに私が頭を抱えた。
恥ずかしいを通り越して胃が痛くなってくる。
「まぁとりあえずご苦労様って事と、種明かしに来ただけだから帰るわ。
この後は渡英に向けて打ち合わせあるし」
良光さんがそう言いながら大きなドアノブに手をかけ背中をこちらに見せる。
今渡英と言った。
早々に日本からいなくなるならもう会えないかも知れない。彼に言いたいことは沢山あるのに。
「良光さん」
私の声に良光さんが顔だけ振り返り、ニヤッとこちらを見た。
「楽しかったです、カラオケで一緒に歌えたの」
他にも言いたいことはあるけれど、一番はこれだった。
ヒトカラでも楽しめたのは謎のギタリストであった良光さんに出会えたから。
その気持ちをとにかく伝えたかった。
「俺も。
紫央里ならやれるとわかってたから課題曲を渡した。
せっかくなんだ、今回だけであの曲歌うのやめるなよ?音楽は武器なんだかさ」
彼はそう言って初めて見る悪ガキのような子供っぽい笑顔をして、右手を挙げると部屋を出て行った。



