「お前としては俺に恩を売れるし自分の束縛は無くせるし、さぞかし良い気分だろう。
だがな」
一気に低くなった声に、余裕の笑みで光生さんを見ていた良光さんの表情が止まる。
「紫央里はお前に歌を教えられなくても乗り切っただろう。
俺が助けたみたいにお前は自慢しているが、そもそも最初から紫央里を巻き込むな。
そこまで肩入れする相手だったんだ、巻き込む前に片をつけられなかった自分の能力を恥じろ。
それに、もしも外部に俺たちの関係を話す必要が出来たなら本当の理由を話す。
お前に作られた嘘の出逢いじゃ、俺が紫央里を思い続けていた時間が無かったことになる。そんなのは冗談じゃ無い」
いや、買いかぶりですと突っ込もうと思ったけれど、あまりに熱の籠もった言葉が続き私の顔が火照ってしまう。
滅茶苦茶恥ずかしいこと言っていて勘弁して欲しい。
だが光生さんの言葉はそこで終わら無かった。
「それと、俺の恋人を名前で呼ぶな!金輪際だ!」
人差し指を良光さんの方に向け、大きな声で光生さんが言い放つ。
流石の良光さんもあっけにとられたのか口をぽかんと開けていたが、大きな声を上げ腹を抱えて笑い出した。



