12上の御曹司と女子高生は愛を育めない


良光さんが俺が説明すると面白がって言うのを黙らせ、私がカラオケボックスで壁越しに知っていた謎のギタリストの話、そしてとある女性にアメイジング・グレイスのCDをもらい暗譜をするよう言われたこと、そしてその彼女から『音楽は武器よ』と言われたのを思いだし、あの場でアメイジング・グレイスを歌ったのだと説明した。

始終光生さんの顔はしかめ面で、話ながらやはり色々不味かったかなとハラハラしてしまう。

聞き終えると光生さんはしかめ面のまま私の頭に手を乗せおでこを軽く小突いた後、大きなため息をついた。


「なるほど。お前はあの女の計画を知っていて早々に手を打っていた訳か」


苦々しい顔で光生さんが言うと、面白そうに良光さんが笑う。


「母親が言っていたのはパーティーで恥を掻かせるって話だったから、まだターゲットが紫央里かそっちかは聞いた時点で判断できなかった。
まぁお兄様は何が起ころうとかわすだろうが、紫央里が狙われた場合も考えて何か手を打っておこうと思ってね。

俺がやれるとしたら音楽でしか手助け出来ないし、あの曲なら歌ってひんしゅくは買わないだろうしさ」


そんな事を考えていたんだ。
チャラい嫌な人だと思っていた相手がまさかの助っ人でずっと会いたかった謎のギタリストだったわけで。
未だ色々な興奮が冷めやらない私に対し光生さんは鋭く目を細め、


「母親の命令には断れないから従う振りをして相手に勝たせたか。
そうすれば俺が良いところを持っていって次期社長への道筋をつけやすく、あの女の派閥は簡単に動けなくなる。そしてお前は呪縛から放たれる、と」

「何度も言ってただろ?俺は会社を継ぐ気は無いと。
これで多くの関係者の前でお兄様は自分の優秀さをアピール出来た上、女子高生と知り合うチャンスを正々堂々持てた事にもなる。
後々言えないだろ?まさか騙して偽の婚約者にさせたのが出逢いだなんて」


はは、と軽く笑う良光さんに、光生さんはどんな気持ちなのかと上目遣いで見てみれば、不敵な笑みを浮かべていて私の心配が何か違う方に必要なのではと感じた。