「音楽という武器をきちんと使いこなせたじゃねーか」
その言葉に思考が止まる。
今、彼は何て言った?
「音楽という、武器?」
光生さんがいぶかしそうな声で言うと私に視線を向ける。
音楽は武器、これを知っているのはあのカラオケボックスで出会った女性。
いや、その言葉は他の人からの伝言だ。
それは、正解、と書き残したあのギタリストの。
「あなた、もしかしてカラオケボックスの?」
声が震えている。
だってあんな昔から壁を隔てて会っていた相手がまさか。
「実は紫央里とはお兄様より前から知り合いなんだよ、紫央里は俺の顔見たこと無かっただろうけど」
「え?!そっちは私の顔見たことあるの?!」
思わず声が大きくなって前のめりに聞けば、良光さんは片手を上げてふらふらと動かす。
「当然。
あのカラオケボックスはダチが経営しててさ、俺が来るときは隣を必ず空けて置いて紫央里が来たらその部屋に通してたんだよ。
だから紫央里のフルネームも学校も年齢も何もかも、こっちはとっくの昔から把握済み。
それが兄の偽の婚約者として来た時にはもう笑い転げそうだったね」
「どういう、事だ?」
流石に光生さんが苛ついた声で良光さんと私を見た。
そりゃそうだ、私だって驚いているけれど光生さんは全く話が見えないだろう。



