「おやおや、あのお兄様が女子高生の尻に敷かれているなんてね」
「で、今更何の用だ。今回の罠は失敗だろう。
悪いが俺の恋人をこういう形で巻き込んだ責任はお前達にきっちりとってもらう。
俺がその為に何も準備していないと思ったら間違いだな」
見たことも無いほど冷たい目の光生さんに私はただその手を強く掴む。
光生さんは弟を睨んだまま私の手を強く握り返した。
「あぁ、是非俺の会社での居場所を徹底的に無くして欲しいね」
良光さんの言葉に、光生さんも一瞬何を言っているのかわからなかったのか不審そうな表情を浮かべる。
「俺の夢はイギリスでギタリストとして食っていく事だ」
ギタリスト?
この人今日は一応スーツではあるけれど、前回見たときはチャラいなという外見と服装だった。
母親は光生さんの弟を次期社長にしようとしていたのに、当人にその気は無かったと言うことだろうか。
「なるほど。
だがお前があの女の命令に従い紫央里を罠にかけたことに変わりは無い」
「嬢ちゃん、初舞台にしては悪くなかったぜ?」
光生さんの言葉を無視して私に声をかけた良光さんに、私もつい眉間に皺を寄せてしまう。
あんなのただの素人によるカラオケだ。
歌って頭を下げて逃げるつもりだったけれど、ピアニストさんの伴奏があったこと、そして何より光生さんが最後上手くまとめてくれたからこそ何とかなっただけで。
「あれは単に素人のカラオケです。
ピアニストさんに助けて貰いましたし、何より光生さんが最後フォローしてくれなければ無理でした」
睨み付けるように良光さんに言えば、彼は口角を上げる。



