「一度化粧室に寄らせて下さい、髪の毛くらい整えたいので」
「無理です。時間がありません」
私は制服、紺の鞄、そして髪の毛は今日は一つにまとめているものの車に乗ったしボサボサのはず。
本当に光生さんの友人達にご挨拶することになっても身だしなみは整えたい。
それすら許さないことが私にはより不信感を強めた。
「何を企んでいるんですか」
私の声に初めて彼が立ち止まる。
それは既にドアの前。
彼は口角を上げ、
「それは中に入ってのお楽しみですよ」
そういうとドアを開けて腕を掴んだまま中に私を放り込み、勢いよく背中を押した。
よろけて中に数歩入り慌てて後ろを見れば、彼は嫌な笑みを浮かべてドアを閉めた。
中は薄暗い。
そして周囲を見て気付いた。
正装した大人達がドリンクなどを持ち談笑している。
奥に視線を向ければライトアップされたそこに「三ツ沢グループ創立記念パーティー」と書かれ、舞台には美しい花々が所狭しと飾られている。
その横にグランドピアノがあって、ドレス姿の女性ピアニストが柔らかな音楽を奏でていた。
やはりはめられた。
急いで光生さんを探すけれど人数が多い。
まずい、とりあえず部屋を出ようと後ずさりしたら突然私にスポットライトが当たり、まぶしさに目を細める。



