「ホットケーキで良いですか?ホットケーキミックス買ってくるので」
「凝った物を要求する気は無いが、もう少し他ので頼む」
本当に私がやりそうだと思ったのか、光生さんはげんなりした顔をしたので頬を突いた。
「今度お母さんに何か習ってきます」
彼の口元が柔らかく弧を描く。
随分私も丸くなったなと思いつつ、光生さんが喜んでくれるならと思ってしまうくらいには好きなのだ。
光生さんはチョコの包装紙を剥がし箱を開ける。
そして今度はそれを私に突き出したので、どういう意味か不思議そうにしていたら、
「一つ口に入れてくれ」
との要求に思わず自分の口がぱかりと開いた。
えっとそれは、私が摘まんでその口に入れろ、と?
自分の顔が赤くなっていたのだろう、光生さんは悪戯な、いや性格の悪そうな笑みで私に詰め寄る。
「なんだ、疲れて帰ってきて彼女からのチョコを食べたいと思う彼氏に、甘いサービスの一つくらいあっても良いんじゃ無いか?」
今日の時間を作るために光生さんが仕事をかなり無茶していたのは春日部さんから聞いていた。
だから今日は早めに終えて寝せてあげようと思っていたけれど、こういう甘え方をされるとまだ恥ずかしいし困惑する。
だけどいつまでもそれじゃ彼女として意味が無い。
私は意を決して四角いチョコを口に入れやすいよう端を摘まむと、そっと光生さんの口に近づける。
ひな鳥に餌をあげると思えば良いんだ、なんて考えたけど無理に決まってる。
恥ずかしさで震えそう、と思ったら、ぱくりと指先ごと食べられ、思わずぎゃぁ!と声を上げてしまった。



