「奥さんもそりゃ恨みますよね、実の子と自分捨てて駆け落ちしたかと思えば、数年後他の女性との間に子供が出来たあげく、三ツ沢家長男連れて戻ってくれば。
せめて自分の産んだ息子を社長にして仕返ししてやりたいって思うでしょ。
全部自分の責任なのに、そこで学んだのってなんですか?
再度自分の息子に同じ目に遭わせる事ですか?」
じっと真面目な顔で聞いていたお父さんが、軽くため息をついてそれが頭にきた。
「君が憤るのも無理はない。だから若気の至りだったんだ。
今でも死んだ光生の母親が私の唯一の妻だと思っているし、光生はそんな中で優秀に育ってくれた。
本妻の息子は駄目だ。一応会社にいるが遊んでばかりで使い物にはなってないし人望もない。
それでも私を良く思わないグループは、そちらを次期社長にして傀儡にしようと考えている。
それではここまで大きくなった会社は早々潰れてしまうだろう。
私には社員を守る責任があるんだ」
「よくわかりませんが、まとめると光生さんを自分の言いなりにさせたいと」
「違う。会社のためには優秀な光生が必要なんだ」
「光生さんはどうしてあそこまで優秀に育ったんでしょうね」
私の質問にお父さんは不審そうな表情を一瞬浮かべたがすぐに消した。
「祖父が三ツ沢家に引き取ったときに英才教育を行ったからね」
「行っても本人の努力が無ければ成り立ちませんね」
お父さんの当然だろう、という顔を見て私はわざとらしく大きなため息をついた。
駄目だ、この人は。
こんな家族に光生さんは囲まれていたのか。
どんな思いでずっと過ごしていたのだろうと考えれば考えるほど、怒りがわき上がる。



