「紫央里さん」
また父親から声をかけられ身構えつつ、はい、と答える。
「率直にうかがいたいのですが、同じ年頃の相手では無く、一回りも離れた光生を選んだ理由をお聞かせ頂いても?」
真っ直ぐな声。
何か裏がある、という感じを受けず、素朴な疑問だろうと感じた。
もちろんこの回答も事前に用意されている。
光生さんの大人な態度と実直さに魅力を感じた、という内容だ。
金目当てと思われるのはまずいからと。
そりゃそうだ、金持ちのボンボンならそう思われるだろう。
ちらりと光生さんを見れば、じっと私を見ている。
回答通りを答えろ、という圧力だろう。
私は父親と、そして母親らしき人に視線を向けてから息を整える。
「一言では難しいです。
我が侭で身勝手で言葉足らずでかなり問題のある人だと思います、見た目だけは良いですが」
「おい」
予想外だったのだろう、速攻隣から低い声が聞こえたけれど無視する。
「ですが、その中にある小さな温かさを見つけて、それが魅力的に思えたんです。
まだ高校生である私を選ぶことは、私より遙に大人である光生さんの方が大変な事だったと思います。
ですが私の歩調に合わせて下さっていることが、何より光生さんの優しさの一つだと思って嬉しく感じています」
そう言って私は彼に笑いかけると、光生さんは見たことも無いほど目を丸くして固まった。
ほとんど無表情か不愉快そうな顔しかしていなかったから、イケメンなんて消し去るほどのその表情を見て絶えきれずに笑うと、眉間に皺が寄っているその顔にまた笑ってしまう。



