「紫央里」
ぞくりとするような低くて甘い声が耳の側で囁かれ、自分の顔が一気に熱を帯びた。
どうしよう、まだ無理ですと言わなければ。
いや、言ってしまうと傷つけてしまうのでは?
頭の中は何かが追いかけっこしているようにぐるぐるして、今にも頭が噴火しそうな気分だ。
「紫央里」
再度呼びかけられた途端、ぐっと顔を掴まれ光生さんの方を向かされる。
思わず手に持っていたペンダントがするりと落ちた。
真面目な顔の光生さんと目があって、動けない。
キス、されるのだろうか。
目を瞑るべきなのか、どうするべきなのかわからないまま彼の顔が近づいてくる。
すると私の顔を掴んでいた手が、思い切り頬を引っ張った。
「いひゃい!!」
びっくりして声を上げれば、光生さんが堪えていたのか笑い声を漏らす。
「以前言っただろう。俺はお前が高校を卒業するまで手を出す気は無いと」
ぽかんとしていると真横に座る私の頭を引き寄せた。
光生さんに身体をすっぽりと包まれ、顔を見ようにも頭を固定されてしまい上を向けない。
身体が熱いのはどちらだろう。ドキドキと鼓動がする音がバレていないだろうか。
「その訳は俺の仕事での立場が影響してるんじゃない。俺が遙に年上で大人だからだ。
18歳以下になんて手を出してみろ、俺が法律的に引っかかる。
とにかく高校卒業まではプラトニックな付き合いしかしないから安心しろ」
頭に置かれた手が緩み、私は光生さんの顔を見るために顔を上げた。
「なんだ」
「結局立場的に無理って事ですね」
「何とでも言え。
高校生同士で付き合うんじゃ無いんだ、大人が配慮するのは当然だろう」
「あの、待てるんですか?」
男子の煩悩溢れる話を漏れ聞くとあと一年以上待つとか無理そうなのに。
それともそういうのは外の女性で済ますとかそういう事かもしれない、大人だし。



