「あ、流石に理解してましたか」
顔を背け首を掻いているのはどういう意味だろうか。
で、と恋人の件をスルーしたまま会話が続く。
「単にお前は地に足を着けた考え方をすると思っているだけだ。
それにまだまだ学生なんだ、夢くらい見ておいた方が良い。
どうせ社会に出て一年もすれば世界が曇って見えてくるんだ」
「それじゃ光生さんなんて、世界は真っ黒で視界ゼロじゃないですか」
光生さんは目を丸くした後、身体を丸めて机を拳で叩いている。
背中が震えているところを見るとツボったらしい。
だけど社会人になると一年でそんなになるのか、なんか嫌だな。
しばらく笑い声を必死に耐えながら身体を丸めていたが、ようやく起き上がった目には薄ら涙があって、そこまでだったかと何だか自分が馬鹿みたいに思えてくる。
「ほんと、紫央里といると飽きないな」
口元は軽く弧を描き、その声はとても温かく、そして少し私の胸に何かを刺した。



