びっくりして自転車を止めて振り返った

そう、俺はお袋が仕事をやめるまでこの保育園に通っていた

そのとき、同じ名前の女の子がいた

いや、正確にはあだ名が同じだったんだけど

ふたりとも『かずちゃん』

まさか、それが松本だったなんて今まで気づかなかった




「かずちゃんが秋元くんだったなんて………、びっくりした」

「ほんとにな」

「世間って狭いね」

「ああ」




俺は松本の言葉を聞きながら、少しずつ思い出していた

保育園時代のことを




「かず……、いや、松本。あの約束覚えてるか?」

「えっ?約束」

「俺が保育園やめて近所の幼稚園に通うことになった日、約束をしたんだ」

「……」

全く思い出せないようで、松本は真剣に悩んでいた

3歳のときの約束なんて、覚えてなくて当然だな

「ごめん、思い出せないや。どんな約束だったのかな?」

「思い出せないならいいや」

そういって、また自転車をこぎだした

「頑張って思い出すよ」

「いや……、ああ…」

思い出してほしいような

思い出してほしくないような複雑な気持ちを抱えたまま

俺はペダルをこいだ