幼なじみのユトの部屋に入るだけなのに
変に緊張する



それもそのはず
ここに採用が決まった後も何の連絡もないまま
私はここに来た




それどころか4年も会話をしていない




私はただこの4年間
ユトの事は見ていたけどそれは
幼なじみのユトじゃなくて
アイドルのユトだ




『失礼します』



ここでは天下のユト様
私はただの雇われ料理人
もちろんユトにも敬語だ



ノックはするものの、返事があるはずもなく
そのまま入った



久しぶりに見るユトの寝顔は私の知っている寝顔
そこだけでも変わってなくて良かった…




『ユト…さん』



人見知りの私が
今までで一番人見知りをしなくていい相手に緊張している



『ユトさん。起きて下さい!
マネージャーさんがお迎えに来られますよ!』




布団の上からトントンと軽く叩いていた私の手は
布団の中にグイっと簡単に引きずり込まれてしまった




またあの日と同じ、何が起きたかわからず呆然としている




ユト「……ミル」




久しぶりの声で呼ばれた自分の名前
久しぶりの手とカラダで後ろから包み込まれて
久しぶりに近くでグクの体温を感じている





『ユト…』





「エプロン付けるのもうやめろ。
エプロンはお前がすると…」





そう言いながらエプロンの下に手を入れて
カラダを触ってくる



『昨日は何も話してくれなかったくせに…』



「今、話してるじゃん」



後ろから抱きしめられていたのに
クルっとユトは私の上に乗り
唇を近づけてくる




『あっ…朝だよ…』





私がそう言うと私のほっぺを片手で挟み




「何、期待してんだよ(笑)マシュマロのくせに」






恥ずかしさと
久しぶりにグクに触れたドキドキ
それに久しぶりに口をきいてもらった嬉しさ
自分の事を忘れられていなかった幸せ





この4年間
本当はユトの事が忘れられなくて
華やかな世界に行ってしまったユトを
あまり見ようとはしなかった





ユトの熱愛報道が出る度
聞きたくもないのに勝手に耳に入ってくるのが
耐えれなかった





だから本当は…









『期待したよ…私』









思わず言ってしまった





『私には…ユトしかいないから。今まで
友達だったのも、抱きしめてくれた人も
ユトしかいないから…」





「ミル…あのさ、、」





ユトが何かを言いかけたけど


ソノ「ミルちゃーん?起こせたー?」


とソノさんの声が聞こえてきた