教員対抗リレーが終わった。
とても幸せだった。藤山先生が運動場を走る姿が、まるでスライドショーのように頭にフラッシュバックしていた。
少し写真を撮りすぎただろうか。昨日フォルダは空にしてきた筈なのに、もう既に容量を86%使用していた。
ふと、膝の痛みが増してきていることに気がついた。
湿布の効力が無くなってきているのだろうか。悪化する前に早めに湿布を替えてもらおう。
そう思い立ち上がった。
養護テントまで少し距離はあるが、まだ歩いて行けそうな軽めの痛みだった。
サラに心配されたものの、「大丈夫」と言って、足を引きづりながら養護テントを目指した?一瞬、私を煽るかのようにビュウと風がふきつけた。
なんとか養護テントに到着すると、そこには藤山先生がいた。
足にテーピングを巻かれて座っていた。
私は自分の膝のことなどもう頭から消え、藤山先生の目の前まで急いで駆けつけた。
「先生、足、」
「ん?あ、南さん。……これ?しばらく走ってなかったから捻った。笑」
藤山先生は、足首を擦りながらそう言った。
私の足首と交換してあげたい気持ちに狩られた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫。なんか恥ずかしいな。」
先生は、少し頬を赤らめていた。
「……もしかして見てた?」
「あはは笑バッチリ見てました。でも怪我してるとは思っていなかったです。」
「そこは分からなくて良かった笑見られてたらだいぶ恥ずかしかった。」
また風が吹いた。砂埃が飛んで私の気管に入り、2,3回コホコホと噎せた。藤山先生に膝の心配をされ、初めて膝が痛んできていたことを思い出した。
「あ、そうだ。」
私は、保健の先生に話しかけ、湿布を替えてもらった。湿布を剥がすと、保健の先生は怪訝そうな顔をした。
「少し腫れてるね。どうする?早退して病院行く?」
私はチラッと藤山先生の方を向いてから、その質問に答えた。
「いえ、様子見ます。」
そうは言ったものの、膝を見ると、確かにプクッと大きく腫れていた。見るからに痛々しい見た目をしている。
「あんまり膝使うといけないし、午後はここにいる?」
保健の先生はそう提案したが、藤山先生がずっとここにいる筈が無いと思い、その提案にも首を横に振った。
「また痛み増すようだったら早めに来るんだよ?」
はい。と返事をして、私は藤山先生が立ち上がるのとほぼ同時に立ち上がった。
そして、藤山先生に話しかけた。
「先生、先程はありがとうございました。これ、飴。です。好きな味かは分からないですけど。良かったら。」
私は少しぶっきらぼうにそう言った。
すると、先生はニッコリと笑った。
「膝大丈夫?、わ、ありがとう。嬉しい。俺レモン味結構好きなんだよ。」
どうせ先輩にも同じこと言ってるくせに。
「俺ストラップ好き」「嬉しい」「ありがとう」って。
どうせさっきあそこで言ってたんでしょ。
私は、いつもはキュンとする筈の先生の言葉を素直に受け止めることが出来なかった。
「じゃあ俺からも。」
予想外の言葉に私はドキリとして顔を上げた。
先生の少し膨らんだポケットから、私があげたのと同じくらいの小さい飴が出てきた。
「これ、ぶどう味。美味しいよ。」
「い、いいんですか、貰っても、」
「うん。良かったら食べて。」
先生はその後、用具係の他の先生に呼び出されて行ってしまった。
先生から貰った少し溶けた飴は、しばらく食べることが出来ずにいた。
とても幸せだった。藤山先生が運動場を走る姿が、まるでスライドショーのように頭にフラッシュバックしていた。
少し写真を撮りすぎただろうか。昨日フォルダは空にしてきた筈なのに、もう既に容量を86%使用していた。
ふと、膝の痛みが増してきていることに気がついた。
湿布の効力が無くなってきているのだろうか。悪化する前に早めに湿布を替えてもらおう。
そう思い立ち上がった。
養護テントまで少し距離はあるが、まだ歩いて行けそうな軽めの痛みだった。
サラに心配されたものの、「大丈夫」と言って、足を引きづりながら養護テントを目指した?一瞬、私を煽るかのようにビュウと風がふきつけた。
なんとか養護テントに到着すると、そこには藤山先生がいた。
足にテーピングを巻かれて座っていた。
私は自分の膝のことなどもう頭から消え、藤山先生の目の前まで急いで駆けつけた。
「先生、足、」
「ん?あ、南さん。……これ?しばらく走ってなかったから捻った。笑」
藤山先生は、足首を擦りながらそう言った。
私の足首と交換してあげたい気持ちに狩られた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫。なんか恥ずかしいな。」
先生は、少し頬を赤らめていた。
「……もしかして見てた?」
「あはは笑バッチリ見てました。でも怪我してるとは思っていなかったです。」
「そこは分からなくて良かった笑見られてたらだいぶ恥ずかしかった。」
また風が吹いた。砂埃が飛んで私の気管に入り、2,3回コホコホと噎せた。藤山先生に膝の心配をされ、初めて膝が痛んできていたことを思い出した。
「あ、そうだ。」
私は、保健の先生に話しかけ、湿布を替えてもらった。湿布を剥がすと、保健の先生は怪訝そうな顔をした。
「少し腫れてるね。どうする?早退して病院行く?」
私はチラッと藤山先生の方を向いてから、その質問に答えた。
「いえ、様子見ます。」
そうは言ったものの、膝を見ると、確かにプクッと大きく腫れていた。見るからに痛々しい見た目をしている。
「あんまり膝使うといけないし、午後はここにいる?」
保健の先生はそう提案したが、藤山先生がずっとここにいる筈が無いと思い、その提案にも首を横に振った。
「また痛み増すようだったら早めに来るんだよ?」
はい。と返事をして、私は藤山先生が立ち上がるのとほぼ同時に立ち上がった。
そして、藤山先生に話しかけた。
「先生、先程はありがとうございました。これ、飴。です。好きな味かは分からないですけど。良かったら。」
私は少しぶっきらぼうにそう言った。
すると、先生はニッコリと笑った。
「膝大丈夫?、わ、ありがとう。嬉しい。俺レモン味結構好きなんだよ。」
どうせ先輩にも同じこと言ってるくせに。
「俺ストラップ好き」「嬉しい」「ありがとう」って。
どうせさっきあそこで言ってたんでしょ。
私は、いつもはキュンとする筈の先生の言葉を素直に受け止めることが出来なかった。
「じゃあ俺からも。」
予想外の言葉に私はドキリとして顔を上げた。
先生の少し膨らんだポケットから、私があげたのと同じくらいの小さい飴が出てきた。
「これ、ぶどう味。美味しいよ。」
「い、いいんですか、貰っても、」
「うん。良かったら食べて。」
先生はその後、用具係の他の先生に呼び出されて行ってしまった。
先生から貰った少し溶けた飴は、しばらく食べることが出来ずにいた。