「てか!寝れるわけなくない?!あんなことあって寝れる方が凄くない?!」

ベットから起き上がり、たまらず1人で声を上げる。
タバコに火をつけて、深くため息をつく。

「あぁ〜もうどうすればいいのよ。」

机に顔を突っ伏してあーだこーだと言っているうちに、眠ってしまった。

「はっっやばっ!今何時!?」

時計を見ると、10時をさしていた。

「はぁ、11時に来るってことはまだ間に合う。良かった、、。」

ベットで寝なかった為、バキバキになっている体をあっちこっちに捻りながら洗面台へと向かう。

「げっっ!!顔ひど!!」

鏡に写る自分があまりにも老けすぎている。
毛穴も開いて、クマもあり浮腫みまくっている。
普段幼なじみと遊ぶ時はそんなこと気にならないはずなのに、今日は何もかもが気になって仕方ない。
とりあえずパックしながら、昔買った美顔器でもあてて、その間に服を決めよう。

パックをして、片手で美顔器を当てながらクローゼットを開けて服を見る。
春らしくなったとはいえ、3月はまだまだ寒い。

「ん〜。何着てこうかな。」

いつも着ているカジュアル系の服を鏡の前で当ててみるも、しっくりくるものがない。
これは?あれなら!と、服を当ててみては、ポイッとベットの上に置いてを繰り返している。

「夕ってどんな服が好きなんだろ、、、」

そう呟いて、はっとする。

「もー!夕がデートなんていうから!変に意識しちゃうじゃん!もういつも通りでいいや!」

なげやりになって、いつも着ているカジュアル系のパンツスタイルの服を着る。

よし、あとはメイクだけ〜っと!

パックを外そうとした時にエントランスの呼び出し音がなる。

「え!?」

時計を確認すると、もう既に10時50分。
え!服選びにそんな時間かけてた?!
やっばい!時間見てなかった、、、。
とりあえず夕入れてあげないと。

そう思いロックを解除する。

「ごめん!まだ準備終わってなくて!」

上がってきた夕にそう言うと優しく笑って

「全然」

と言ってくれる。

「とりあえず入って待って、、」

そこで鈴音は大変なことに気づく。
クローゼットで出しては投げてを繰り返した服達。
かろうじてリビングと寝室の間には扉があるものの、今は全開。
あんな汚い部屋は見せられない。

「ぬぁあ!待って!!」

時既に遅し。夕はしっかりと寝室のベットにてんこ盛りにされた服たちを見てしまったようだ。

「すず、俺のために悩んでくれてたんだ」

そう言いながら、嬉しそうに鈴音の手を引いて鏡の前へと誘導する。

「俺、いつものこういう服も好きだけど、こんな服きてるすず見た事ないから、今日はこれにしない?」

途端に声色を色気のあるものに変えて、可愛いロング丈のワンピースをすずに当て、もう片方の手で指を絡めてくる。
すずの後ろに立って、ワンピースを当てているため、耳元で夕の声が聞こえて一気に顔に熱がこもる。

「だめ?」

子犬のような顔で鈴音の顔を覗き込むので、たまらず

「わわわかったから!!着替えるからリビングで待ってて!」

と夕を押して寝室から追い出す。

はぁぁぁぁぁぁぁあ!!
この前から知らない夕を見る度に心臓の音がうるさくてたまらない。

夕の思惑通り、鈴音は着々と夕を意識し始めてしまっているも、これが恋なのか、それともただ男の子に近寄られる事が久々すぎて緊張しているのかはまだ分からないでいる。